今大会の開幕6日前となった今月四日。学校で練習を終えた直後、急な腹痛で動けなくなった。虫垂炎(盲腸)と分かり、その日に入院して手術を受けた。見舞いに来た仲間たちは「おまえが戻るまで勝ち続ける」と励ましてくれた。
八日に退院すると、父の英治さん(44)と病院からバッティングセンターに直行した。まずは目の感覚を取り戻そうと、機械が投げるボールを見続けた。
仲間たちは約束通り1、2回戦を勝ち上がってくれた。チームの全体練習に復帰したのは、2回戦翌日の十五日。最初はランニングから始め、打撃の練習も再開できるようになった。そして十九日の3回戦で試合出場を果たし、三回の同点適時打で勝利への流れを呼び寄せる活躍を見せた。
この日も「心配をかけた仲間のために活躍する」と心に誓って出場した。5打数1安打で得点に絡むことはできず、サヨナラ負けを喫した。
「本人は口にしないけど、まだ痛みが残っていたと思う」と英治さん。最後の夏に全試合のグラウンドに立つことはできなかったが、「完全燃焼できた。悔いはありません」と口調はすがすがしかった。
(東京新聞埼玉版)