春の甲子園大会

21世紀枠候補校紹介 上尾、「人間力」で強豪に挑む

選手全員で取り組む行進。統率のとれた動きで、この練習に魅せられて上尾に入学する選手も少なくない選手全員で取り組む行進。統率のとれた動きで、この練習に魅せられて上尾に入学する選手も少なくない

 埼玉は長く私立の優勢が続く。甲子園出場は春が1996年以降、夏は99年以降、いずれも私立が独占。そんな中、昨年の秋季埼玉大会で公立校として唯一8強入りし、意地を見せた。

 甲子園には春3回、夏4回出場し、75年夏には4強。OBに楽天の仁村徹ヘッドコーチや2081安打を放った山崎裕之(西武など)らプロ選手も多い。しかし84年夏を最後に甲子園から遠ざかる。

 その再建に取り組むのは、84年夏の甲子園に出場したOBで商業・情報科教諭の高野和樹監督(48)。95年春に鷲宮で部長として甲子園へ。その後同校監督として増渕竜義(元ヤクルトなど)らを育て、2010年秋に上尾へ赴任した。

 「強豪私立に勝つには最少失点で接戦に持ち込むほかない。競り合いでは実力以上に精神面が問われる」と高野監督。行進やランニングを選手全員一糸乱れぬ動きで行い、練習も妥協がない。ミーティングでは、技術論から人生論まで説く。その指導が少しずつ実り始め、12年秋の埼玉大会準々決勝で翌春のセンバツ覇者・浦和学院と6−7と競り合うなど力をつけてきた。

 部員62人の多くが商業科で学び、簿記や情報処理の資格を取る。簿記2級に合格した増田陸主将は「勉強と野球の両立は苦しいが、やり遂げる」。文武両道を指す校訓「文武不岐(ぶんぶわかたず)」を体現する。

 障害のある人と交流する「ふれあい野球教室」に参加するなど社会貢献にも積極的だ。「将来のリーダーとしての下地作りが、上尾の伝統」と高野監督が話す通り、13年センバツ優勝の浦和学院・森士監督や99年夏の甲子園優勝・桐生第一(群馬)の福田治男監督ら約20人の高校野球指導者を輩出。指導者を志す選手も多い。

 「昔ながらの高校野球で選手の人間力を高める。恩師に学んだ野球は不変」と高野監督。恩師とは、かつて上尾を6回甲子園に導いた故・野本喜一郎元監督。その信念が、息づく。

(毎日新聞)

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