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逆境バネ 練習場失った東京成徳大深谷

練習場がなくても優勝を狙う東京成徳大深谷ナイン練習場がなくても優勝を狙う東京成徳大深谷ナイン

 グラウンドが無くたって勝てるんです! 第97回全国高校野球選手権埼玉大会(7月10日開幕)の組み合わせ抽選会が23日、さいたま市内で行われた。昨年4月に練習場を失いながらも、春ベスト4入りした東京成徳大深谷は第2シードで、12日に所沢北との初戦(2回戦)に臨む。グラウンドを使えるのは週2回ほどで、現部員は3年生のみ。苦境をはね返し初の頂点を狙う。

 思い切りバットを振って、泥まみれになれる日が待ち遠しい。東京成徳大深谷ナインは、野球が出来る時間を心から満喫する。

 当たり前のように向かったグラウンドがなくなったのは、昨年4月だった。98年の創部から使用していた土地の管理者が、ソーラーパネルを設置することを決めた。校庭は部員100人を超すサッカー部が使用し、分割使用できる余地はない。

 現在の「ホームグラウンド」は学校からバスで約10分の仙元山神社。境内に続く156段の階段と、本堂を取り巻く山道を駆け上がるのが日課だ。週2回ほどの本格的な練習が可能な本庄球場まではバスで約20分。一般利用が優先のため週末は使えない。泉名智紀(せんみょう・ともゆき)監督(45)には印象に残る言葉がある。「3月中旬、今年最初の球場での練習に向かうバスで、選手の誰かが『スパイクを履くの今年初めてだ』って言ったのが聞こえたんです」。こんな思いをさせていいのかと、バスの運転中にこみ上げるものがあった。

 1、2年生の部員はいない。泉名監督らが入部希望者に、厳しい状況を説明した。練習環境が悪化することは予想できたため苦渋の決断をした。現部員はマネジャーを除けば3年生17人だけ。夏が終わることは、即休部の危機を迎えることを意味する。

 一方で、選手らは時間を有効利用する。学校から移動するバスは、即席ミーティングルームとなった。練習前にやるべきことを挙げ、共通理解を図る。練習後は課題を挙げて反省会を行う。吉田龍弘捕手(3年)は「言い訳はしたくない。グラウンドがあるところに負けたくない」。団結力はさらに強まった。

 春の埼玉大会では4強に進出。2回戦から準々決勝までの3試合はすべて2点差以内の接戦をものにしてきた。落合大地投手(3年)は「勝負どころで臨機応変に対応できた」とチームワークで乗り切った。旋風を巻き起こせるだけの地力はついた。さらにその先へ、勝負をかける夏が幕を開ける。

(日刊スポーツ)

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