第88回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)第4日の23日、花咲徳栄は初戦で秀岳館(熊本)と対戦した。チームは幸先良く三回表に先制したが、その裏に5点の大量失点を許し、八回表に1点差まで詰め寄ったものの、5−6で惜敗した。
「逆転だ!」。八回表、2−6で4点を追う花咲徳栄は2番・高橋哉貴(としき)選手(3年)、4番・西川愛也(まなや)選手(2年)、5番・楠本晃希選手(3年)の長打攻勢で3点を返し、スタンドは一気に活気づいた。楠本選手の父・武史さん(49)は息子の活躍を喜び「あと1点、みんなで取ってほしい」と祈った。
七回には、力投したエース左腕・高橋昂也投手(3年)に代わり、公式戦初登板の綱脇慧投手(2年)がマウンドに上がった。父・啓太さん(50)が「私の方が緊張してきた。がんばってほしい」と見守る中、綱脇投手は安定した投球で相手打線を抑え、スタンドからは「ナイスピッチング!」とたたえる声が上がった。
1点差で迎えた九回表も、スタンドの応援団は声をからしてエールを送ったが、あと一歩及ばず、初戦突破はならなかった。試合後、岡崎大輔主将(3年)は「点を取られても、(点を取り返して)相手を上回れば勝てる。(夏に向け)そういうチームを目指す」と次を見据えた。
「代役」で2打点 西川愛也外野手(2年)
適時打2本の活躍をみせたのは、4番・西川愛也選手(2年)。この健闘を陰で支えたのは2月の練習で左足を負傷し、後輩の西川選手に4番を託したチームの主砲・隈本達也選手(3年)だった。
西川選手は隈本選手の負傷後、岩井隆監督から「隈本が治らなかったら4番だ」と急きょ抜てきされ、今月初旬の練習試合から4番に座った。
試合に出られなくなった隈本選手だが、「後輩に思い切り打ってほしい」と西川選手の指導役を買って出た。練習試合では、打撃で「初球の甘い球は必ず狙え」と助言し、守備でも「ドライブがかかったフライがくるぞ」などと声をかけた。
隈本選手は23日の試合前、西川選手とキャッチボールし「落ち着いていけ」と声をかけた。「自分に務まるか不安だが、隈本さんの代役を精いっぱい務めたい」。こう決意した西川選手が2打点の結果を出した。惜しくもチームは敗れたが、「夏に帰ってくる」と誓った。
甲子園に声援届いたかな 加須で150人観戦
花咲徳栄高(加須市花崎)の講義室でも生徒や保護者ら約150人が大型スクリーンで試合を観戦し、甲子園のスタンドに負けない声援を送った。この日は、27日から同市内で始まる「第17回全国高校女子硬式野球選抜大会」に出場する女子野球部員33人も応援に参加。試合後、宇佐美優奈主将(2年)は「最後まで諦めない気持ちが伝わった。次は私たちの番。男子の分まで頑張り、ベスト8以上を狙いたい」と活躍を誓った。
保護者が二千羽鶴
スタンドでは試合前、千羽鶴ならぬ二千羽鶴がお披露目された。木箱の中で約2300羽がチームのテーマ「力」の文字形に並ぶ。センバツ出場決定後、淀紫苑選手(3年)の母・敬子さん(36)が発案し、保護者らが約3週間かけて完成させた。北海道出身の佐藤優翔選手(3年)の母・博子さん(47)は、折り鶴の裏に「がんばれ」と書いた。この日、チームは惜敗したが、祈りのこもった折り鶴は夏の甲子園での再登場を待つ。
走攻守鍛え直す 花咲徳栄・岩井隆監督
少ない安打で1点ずつ奪っていくことはできたが、四球を与えたことが点差につながった。高橋昂也は相手に粘られ、追い込んでから三振を取れなかった。夏までに走攻守の全てを鍛え直す。
三回先制で緩んだ 花咲徳栄・岡崎大輔主将
三回に先制して気持ちが緩んだ面があった。日本一を目指す上で、甲子園は怖い場所だと改めて分かった。高橋(投手)も絶好調ではなかったが、秀岳館の打撃が良く一歩届かなかった。
(毎日新聞埼玉版)