一回の第1打席は死球で出塁したが、三回と五回は凡打を重ねた。そして六回、2死二塁のチャンスで打順が回ってきた。「甘く入ってきた。これしかない」。高めの直球を中前にはじき返し、貴重な追加点を奪った。この一年間の努力が実った瞬間だった。
昨夏の県大会の開幕試合。1-2で迎えた九回裏2死の場面で打席に立ったが、飛球に倒れ、初戦敗退にさせてしまった。昨秋の県大会は準決勝に進んだが、2点を追う九回裏1死満塁の場面で併殺を取られた。「みんなに申し訳ない」。悔しさで、学校に戻るまで涙が止まらなかった。
「練習しても意味がない」。この冬に打撃練習をしていたとき、思わずつぶやいた。すると、そばにいた米沢恭稀(やすき)主将(三年)が「一番努力してきた幸成が打てない訳はない」と励ましてくれた。そんな仲間がいることがうれしかった。「やらなければ」と奮起し、一日に1000回以上もバットを振るようになった。
そしてこの日の決勝。安打は一本だけだったが、四年ぶりの優勝に貢献することができた。「甲子園でも一戦、一戦勝ち上がって日本一になる」。最後の夏はまだ終わらない。
(東京新聞埼玉版)