けがを乗り越えて川越東戦にエースとして先発した。制球力が定まらず、春季関東大会で準優勝した強力打線の前に満塁本塁打を含め、3回9失点で降板した。チームの逆転を最後まで願ったが、かなわなかった。
「まさか試合に出られるとは思っていなかったので、よい経験ができた」。今春の県大会で左肩を痛めて途中降板して以来、けがと闘ってきた。病院で筋肉の炎症と診断され、1カ月半ボールを投げられなかった。焦りと不安で、グラウンドで練習する仲間を見るのがつらく、校外へ一人ランニングに出ることもあった。
そんなエースを奮い立たせたのは「気持ちを強く持て」「おまえがいないと負ける」というチームの仲間たちからの励ましの声だった。「マウンドに戻りたい」。接骨院に毎日通い、六月中旬に練習に復帰することができた。
高校時代最後となった晴れの舞台。球場の観客席には全校生徒約1000人が詰め掛け、大声援を送った。「こんな多くの人に応援してもらったのは初めて」と振り返った。
(東京新聞埼玉版)